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トロイメライ
1 2← 3 →4
コルダ4後、3年生になってからのお話、夢に翻弄されるニア
函館のイベントはほぼゲーム中と同じです
若干ニアがセンチメンタルかつ女々しいので、苦手な人はお気を付けください。
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コルダ4後、3年生になってからのお話、夢に翻弄されるニア
函館のイベントはほぼゲーム中と同じです
若干ニアがセンチメンタルかつ女々しいので、苦手な人はお気を付けください。
「でもそれは」
あの夢を見るようになってから、ニアは少しだけピアノが弾きたいと思っていた。ピアノを弾いたら、小日向はあの夢のように自分を慕ってくれるのではないか。そこまで考えて、ニアは苦笑した。自分にもうピアノを弾く資格などないというのに。
ニアは音楽というものが好きではなかった。それが先天的なものであったか、後天的なものなのかはもう覚えていない。
幼いころに両親を亡くした彼女は、アレクセイ・ジューコフという世界的に有名な指揮者である叔父に引き取られた。アレクセイは音楽の才能があるかもしれない子供たちを集め、音楽をやらせ、リラの家と呼ばれる洋館に住まわせていた。それはニアも例外ではなかった。
その中でニアはたくさんの子供たちが音楽に破れ、リラの家を去っていくのを見た。こんなにも音楽に身を捧げても、音楽の女神が微笑んでくれるとは限らない。それが怖かったのか、音楽にとりつかれた叔父を見るのに耐えられなかったのか、今はもう思い出せないがニアはピアノを弾くのを辞めた。
ニアは戯れにピアノの鍵盤を押した。誰もいないラウンジに、ピアノの音だけが空しく響く。もしあのままピアノを続けていたら。あの夢のように、小日向と音を合わせている今があったのかもしれない。
ピアノを辞めて何年になる?
それなのに、指ははっきりとこのメロディを覚えている。
あの夢で弾いているから?
あの、夢。
夢?
もしかして、夢なのはこちらで、現実はあちら側なのではないか。
トロイメライは続く。
それなのに、指ははっきりとこのメロディを覚えている。
あの夢で弾いているから?
あの、夢。
夢?
もしかして、夢なのはこちらで、現実はあちら側なのではないか。
トロイメライは続く。
「ピアノ、また始めたの?」
すぐ後ろから声がして、ニアはその手を止めた。
「気配無く人の背後に立つのはやめてくれないか」
かつての同居人にニアは不快感をあらわにする。声の主である天宮は、アレクセイが集めた子供の一人だった。
天宮はアレクセイの内弟子というだけあって彼に良く似ている。音楽にしか興味が無く、子供のように欲しいものに執着し手段は問わない。リラの家にいた時とは少し変わったようだが、ニアは昔から虫が好かなかった。こんな面倒な男にさえ小日向は屈託なく笑うから、そのことも相まって気に入らない。
「僕は何度も声をかけたよ。でも支倉さん、全然気づかないから」
天宮は無表情のままニアを見た。相変わらず何を考えているのかわからず、ニアは目を逸らす。
「生憎だが小日向は留守だ。帰るといい」
「そう。なら、どうしようかな」
天宮は感情の見えない瞳でニアを見つめた。
「なんだ、まだ用があるのか? 私と歓談でもしに来たのか」
その言葉に被せるように、天宮は口を開いた。
「何かにとりつかれているようだったよ」
「どういう意味だ」
「すごく、楽しそうで……、楽しい夢の中にいるみたいに」
ニアは動揺を隠すようにピアノの蓋を閉める。天宮は部屋を見回し、再びニアを見た。
「僕も、夢を見たことがあるんだ」
「は?」
「小日向さんが天音学園にいる夢。起きるとぼんやり薄れてしまうけれど、幸福な夢。でもそれは夢なんだ」
「……」
「それだけ。支倉さんも良い夢を」
口元に笑みを浮かべて、天宮は手を振った。でもその目は笑っていない。
すぐ後ろから声がして、ニアはその手を止めた。
「気配無く人の背後に立つのはやめてくれないか」
かつての同居人にニアは不快感をあらわにする。声の主である天宮は、アレクセイが集めた子供の一人だった。
天宮はアレクセイの内弟子というだけあって彼に良く似ている。音楽にしか興味が無く、子供のように欲しいものに執着し手段は問わない。リラの家にいた時とは少し変わったようだが、ニアは昔から虫が好かなかった。こんな面倒な男にさえ小日向は屈託なく笑うから、そのことも相まって気に入らない。
「僕は何度も声をかけたよ。でも支倉さん、全然気づかないから」
天宮は無表情のままニアを見た。相変わらず何を考えているのかわからず、ニアは目を逸らす。
「生憎だが小日向は留守だ。帰るといい」
「そう。なら、どうしようかな」
天宮は感情の見えない瞳でニアを見つめた。
「なんだ、まだ用があるのか? 私と歓談でもしに来たのか」
その言葉に被せるように、天宮は口を開いた。
「何かにとりつかれているようだったよ」
「どういう意味だ」
「すごく、楽しそうで……、楽しい夢の中にいるみたいに」
ニアは動揺を隠すようにピアノの蓋を閉める。天宮は部屋を見回し、再びニアを見た。
「僕も、夢を見たことがあるんだ」
「は?」
「小日向さんが天音学園にいる夢。起きるとぼんやり薄れてしまうけれど、幸福な夢。でもそれは夢なんだ」
「……」
「それだけ。支倉さんも良い夢を」
口元に笑みを浮かべて、天宮は手を振った。でもその目は笑っていない。
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