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13話← 茨の森12話 →11話 →→→1話
函館天音軸 冥加×かなで
函館軸ですがゲーム本編に全然沿ってません(コンクール云々は一緒)
ファンタジー色強め、登場人物のキャラクターがおかしいかもしれません
オリジナルの捏造設定のようなものも多々でてくるのでご注意を。
函館天音軸 冥加×かなで
函館軸ですがゲーム本編に全然沿ってません(コンクール云々は一緒)
ファンタジー色強め、登場人物のキャラクターがおかしいかもしれません
オリジナルの捏造設定のようなものも多々でてくるのでご注意を。
「夜」
最近、天宮は良く理事長室を訪れる。相変わらずノックをせずにするりと理事長室に入り込んでくるのだ。
「この前、小日向さんと一緒に昼食を食べたんだ。その時、色々聞いてね」
どうやら最近の天宮の好奇心は小日向に向けられているらしい。天宮は飄々としているが、興味を持ったものには人並みの執着を見せる。
天宮の口ぶりからして、先日の小日向の行動の原因は天宮かもしれない。
「小日向に余計なことを吹き込んだのはおまえか」
「余計なこと? 僕は特に有益なことは教えてあげられなかったけど」
「何を話した」
「冥加について僕が知っていることを少しだけ」
天宮はからかうような声で続けた。興味の対象は小日向か、それとも冥加自身をからかうことを目的としているのか。どちらにせよ、冥加には関心の無いことだ。
「やっぱり、小日向さんと過去に何かあったっていうのは本当なんだ」
沈黙を肯定と捉えたのか、天宮は満足そうに笑みを浮かべる。自分は表情に乏しい癖に、他人の機微には目ざといのだ。
「お前には関係ない」
この因縁を誰かに話すつもりは毛頭なかった。これは自分と小日向だけの問題であり、大衆にひけらかすような復讐劇でもない。
「でも、まだ思い出せてないみたい。彼女、自分が酷いことをしたって言ってたけど、何をされたの?」
冥加が答えず軽く睨むと、天宮は肩をすくめた。
「まあ、別に答えなくてもいいよ」
本来ならば明日の室内楽部のミーティングで話すつもりだったが、話題を逸らそうと冥加はセミファイナルについて言及した。
「セミファイナル、俺たちは演奏をしないことになった」
アレクセイの思う通りになったのは癪だが、冥加自身コンクールに固執する意味が無くなったため、ほとんど抵抗もしなかった。同じ出場校として扱われてしまっては横浜天音学園の評価を上げる効果は薄く、また小日向をこの手で打ち負かすという目的も果たせない。
「へえ、そうなんだ。僕は別に構わないけど、君はいいの?」
「アレクセイの意向だ」
「先生がこんな学生のコンクールにこだわるなんて珍しいね」
冥加と同じように、天宮もアレクセイがこのコンクールに介入することが不思議なようだ。あの男を知る人間ならばそう思って当然なのだ。だからこそ、この干渉には何か意味があると考えるのが普通だ。
「俺にもまだ奴の思惑はわからん」
アレクセイも御影もアンサンブルを函館天音に演奏させるということ以外は特に動きはない。
「そういや、先生は今どこにいるか知ってる?」
「知らないな。俺もあいつの動向を一々気にしていられるほど暇じゃない」
今は演奏ツアーの類は終えていてはっきりとした居場所まではわからなかったが、顔を見せないということはおそらく日本には居ないのだろう。牽制のつもりなのか、アレクセイは日本に来ると天音学園に姿を現すことが多い。
「そうか。じゃあ仕方ないな」
「奴に何か?」
「僕じゃなくて、小日向さんが話したいって言ってたから」
「小日向が?」
アレクセイと小日向が何かしらの関係があると踏んでいた冥加の予想は外れた。二人が何かを企んでいるとすれば、わざわざ他の人間を通して連絡を取るということは無い。天宮にそれを言わせ冥加を欺く演技かもしれないが、小日向は演技ができるほど器用には見えなかった。
「記憶の手がかりを色々探しているみたい。健気だよね。練習の方も頑張ってるようだし」
それは冥加にも心当たりがあった。練習室の一部屋の利用記録が小日向かなでという文字で大半が占められていたからだ。日中は人の多い野外で練習をし、外で音を出すのは咎められる時間には天音学園の練習室を利用しているようだった。
「記憶が無いっていうのは、辛いことなのかな」
「さあな。俺の知った事ではない」
あの記憶を完全に忘れることが出来たならと思ったことが無いわけではない。だが、それは過去から目を背けるのと同義だ。復讐を決めたあの日から、いや、もとよりその前から冥加に逃げるという選択肢は残されていない。
「思い出せないのならそれで構わん」
忘却は憎しみとなり、それは復讐の糧となる。
「でもやっぱり、小日向さんは特別なんだ」
そう言って天宮は窓の外を見つめた。
「それなら尚更見失わないようにね。彼女、深い森の中にいるみたいだから」
冥加からはガラスに映る天宮が見えるだけで、外の様子は見えなかった。
「セミファイナル、俺たちは演奏をしないことになった」
アレクセイの思う通りになったのは癪だが、冥加自身コンクールに固執する意味が無くなったため、ほとんど抵抗もしなかった。同じ出場校として扱われてしまっては横浜天音学園の評価を上げる効果は薄く、また小日向をこの手で打ち負かすという目的も果たせない。
「へえ、そうなんだ。僕は別に構わないけど、君はいいの?」
「アレクセイの意向だ」
「先生がこんな学生のコンクールにこだわるなんて珍しいね」
冥加と同じように、天宮もアレクセイがこのコンクールに介入することが不思議なようだ。あの男を知る人間ならばそう思って当然なのだ。だからこそ、この干渉には何か意味があると考えるのが普通だ。
「俺にもまだ奴の思惑はわからん」
アレクセイも御影もアンサンブルを函館天音に演奏させるということ以外は特に動きはない。
「そういや、先生は今どこにいるか知ってる?」
「知らないな。俺もあいつの動向を一々気にしていられるほど暇じゃない」
今は演奏ツアーの類は終えていてはっきりとした居場所まではわからなかったが、顔を見せないということはおそらく日本には居ないのだろう。牽制のつもりなのか、アレクセイは日本に来ると天音学園に姿を現すことが多い。
「そうか。じゃあ仕方ないな」
「奴に何か?」
「僕じゃなくて、小日向さんが話したいって言ってたから」
「小日向が?」
アレクセイと小日向が何かしらの関係があると踏んでいた冥加の予想は外れた。二人が何かを企んでいるとすれば、わざわざ他の人間を通して連絡を取るということは無い。天宮にそれを言わせ冥加を欺く演技かもしれないが、小日向は演技ができるほど器用には見えなかった。
「記憶の手がかりを色々探しているみたい。健気だよね。練習の方も頑張ってるようだし」
それは冥加にも心当たりがあった。練習室の一部屋の利用記録が小日向かなでという文字で大半が占められていたからだ。日中は人の多い野外で練習をし、外で音を出すのは咎められる時間には天音学園の練習室を利用しているようだった。
「記憶が無いっていうのは、辛いことなのかな」
「さあな。俺の知った事ではない」
あの記憶を完全に忘れることが出来たならと思ったことが無いわけではない。だが、それは過去から目を背けるのと同義だ。復讐を決めたあの日から、いや、もとよりその前から冥加に逃げるという選択肢は残されていない。
「思い出せないのならそれで構わん」
忘却は憎しみとなり、それは復讐の糧となる。
「でもやっぱり、小日向さんは特別なんだ」
そう言って天宮は窓の外を見つめた。
「それなら尚更見失わないようにね。彼女、深い森の中にいるみたいだから」
冥加からはガラスに映る天宮が見えるだけで、外の様子は見えなかった。
天宮が去った後も仕事を続け、区切りの良いところで切り上げ冥加はパソコンの電源を落とした。アレクセイの思惑についてあれこれ考えていたせいか、思ったよりも遅くまでかかってしまった。居ないにも関わらず邪魔をするアレクセイに悪態をつき、冥加は理事長室を出た。
夜も遅い校舎には誰の人影も無く、自分の足音だけが響く。この誰もいない、誰にも邪魔をされない静寂が冥加は嫌いではなかった。
練習室の並ぶ廊下に差し掛かり、冥加は消灯された廊下に一つだけ灯りを見つけた。生徒が電気を消し忘れたのだろうか。嘆息しながら冥加は練習室に近づき扉を開けた。
中にいたのは小日向だった。扉を開けてしばらくの間立ち尽くしていたが、冥加は迷いながらも室内へと足を踏み入れた。
「小日向」
呼びかけるも返事はない。触れるのも躊躇われ、冥加は手持ち無沙汰に部屋の中を観察するほかなかった。
書き込みのおびただしい楽譜の上に突っ伏して小日向は眠っている。その手に直前まで握られていただろうシャープペンシルは机の上に転がり、途中からあらぬ文字を生み出していた。もう夜も遅いというのに、無防備に眠るその姿に微かな苛立ちを感じた。
どうしてこうもこの女は無鉄砲で、煩わしいのだろう。それを放っておけない自分もどうかしている。
学園全体が空調設備によって快適な温度に保たれているとは言え、動かず寝ているだけでは体を冷やしかねない。体を壊され、アンサンブルに参加できなくなったと言われても面倒だ。一応天音学園という合同名義で参加しているため、生徒の体調不良で棄権でもすれば横浜天音の名にも傷がつく。
確か理事長室にブランケットがあったはずだ。起きる気配の無い小日向を残し、冥加は理事長室へと戻った。
練習室の並ぶ廊下に差し掛かり、冥加は消灯された廊下に一つだけ灯りを見つけた。生徒が電気を消し忘れたのだろうか。嘆息しながら冥加は練習室に近づき扉を開けた。
中にいたのは小日向だった。扉を開けてしばらくの間立ち尽くしていたが、冥加は迷いながらも室内へと足を踏み入れた。
「小日向」
呼びかけるも返事はない。触れるのも躊躇われ、冥加は手持ち無沙汰に部屋の中を観察するほかなかった。
書き込みのおびただしい楽譜の上に突っ伏して小日向は眠っている。その手に直前まで握られていただろうシャープペンシルは机の上に転がり、途中からあらぬ文字を生み出していた。もう夜も遅いというのに、無防備に眠るその姿に微かな苛立ちを感じた。
どうしてこうもこの女は無鉄砲で、煩わしいのだろう。それを放っておけない自分もどうかしている。
学園全体が空調設備によって快適な温度に保たれているとは言え、動かず寝ているだけでは体を冷やしかねない。体を壊され、アンサンブルに参加できなくなったと言われても面倒だ。一応天音学園という合同名義で参加しているため、生徒の体調不良で棄権でもすれば横浜天音の名にも傷がつく。
確か理事長室にブランケットがあったはずだ。起きる気配の無い小日向を残し、冥加は理事長室へと戻った。
持ってきたブランケットをかけてやると、それに反応し小日向が身じろぎをした。だが目を覚ますことは無く、寝顔も穏やかなまま変わらない。
いつもの自分ならば練習室で寝るなどたるんでいると呆れ、そのまま放っておいたであろう。そうしなかったのは学園全体の利益のためだと、冥加は自分に言い聞かせた。
小日向に対する感情は自分を侮辱したことへの憎悪と、自分の納得するところまで昇りつめたこの女を今度は自分が地の底に叩きつけてやるという復讐心と、そして渇き。わかりやすい前二つの感情とは違って、その渇きが何を意味しているのかは冥加自身複雑すぎて理解できない。憎悪と復讐心さえあればそれでいいと、冥加が渇きの意味を考えることはなかった。
冥加は3本編とAS天音の間ぐらいを目指しているんですが中々難しい。
対決するからこそ3本編はあの冷たさがちょうどいいし、AS天音は近くてコンクールに一緒に励むからこそあれだけ心をさらけ出してたのかなあという
で、函館の場合対決もしない、一緒にコンクール優勝も目指すわけでもない。あれ、これ一番距離感遠いかもしれない()
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