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函館天音軸 冥加×かなで
函館軸ですがゲーム本編に全然沿ってません(コンクール云々は一緒)
ファンタジー色強め、登場人物のキャラクターがおかしいかもしれません
オリジナルの捏造設定のようなものも多々でてくるのでご注意を。
函館天音軸 冥加×かなで
函館軸ですがゲーム本編に全然沿ってません(コンクール云々は一緒)
ファンタジー色強め、登場人物のキャラクターがおかしいかもしれません
オリジナルの捏造設定のようなものも多々でてくるのでご注意を。
「彼の音」
朝から雲が空を埋め尽くし、天気予報が降水確率100%を示していたこともあり、かなでとニアは横浜天音学園の練習室で曲を合わせていた。
「ニア、ちょっといい?」
サラサラと流れる髪が揺れ、こちらを振り向いた。
「どうした?」
「アレクセイさんと、冥加さんについて聞きたいんだけど……二人には何があったの?」
それをニアに聞くのは本当は良くないことなのだろう。必要であれば、おそらく彼は話しているだろうから。だが先日の冥加の警告の意味を、かなでは知りたかった。養父でもある存在を敵視し、危険だと言う訳を。そして、あわよくば冥加自身のことについても知りたかったのかもしれない。
ニアの目がかなでを見て、そしてゆっくりとその口を開く。
「アレクセイ……私の叔父が冥加の養父だってことは、前に話していたな?」
「うん、それは聞いたことある」
「奴は自分の庭を二つ持っていた。それが函館天音と横浜天音。冥加は16の時に横浜天音の方の実権をアレクセイから奪い、その運営をこなしているというわけさ」
「奪ったって……」
「何故冥加がそんなことをしたのかはわからない。単にアレクセイが気に入らなかっただけかもな。私としては大歓迎だが」
ニアは面白がるように笑みをこぼしていたが、その瞳はかなでではなくどこか遠くを見ていた。彼女のその表情をかなでは初めて見た気がする。
かなではあの日の冥加とアレクセイのやり取りを思い出す。コンクールで優勝すれば支援する、とアレクセイは言っていた。二人の会話は今から義理でも親子になろうという温かいものではなく、挑戦者を笑いながら眺める一方的なものだった。
「冥加の過去を知っているか? リラの家に来る前の」
「ニアは知ってるの?」
「まあ、な。あいつの両親は交通事故で亡くなっている」
「え……」
「それなりにいい暮らしをしていたみたいだが、それも心無い親族によって奪われてしまったらしい。両親の死によって、幼い兄妹はたった二人で世間に放り出されてしまった。……だから、かもしれないな。奴が学園を経営しているのは」
養父という言葉から実の両親に何かあったのだろうということは想像していたが、こうして実際に話を聞くことでその重さを実感する。そう、冥加には妹がいるんだ。と言ってニアは目を細める。そしてその妹が冥加とはとても似つかない、可愛らしい少女だということを話した。
かなではその前の言葉の方が気になっていたのだが、どうしてそう思うのかと切り出すタイミングがなかった。それを言ったニアの声は、独り言かと思うほどに小さかったからだ。かなでは彼女の話の邪魔にならないよう、慎重に相槌を打った。
「少し脱線してしまったな。それで、どちらから言い出したかは知らないが、アレクセイは冥加を養子として引き取ったというわけだ。奴も音楽のできる子供を集めていた頃だったからな。お互いの利害が一致したんだろう」
ニアは7年前のコンクールでの取引までは知らないのだ。それは利害が一致したからという円滑なものではなかった。あの時冥加は一人色々なものと戦っていた。ただ楽しいというだけでヴァイオリンを弾いていた自分とは違って。
「ニアは冥加さんの演奏はどう思う?」
「どう思う、ねえ……。まあ、昔からとてつもなく上手いとは思っていたよ。今はそうだな、技術もさることながら陰湿さが増したな」
「陰湿って、もっと言い方あるでしょ」
「本気にするな、冗談だよ。あいつの演奏は圧倒的だ。技巧も表現も。ただ……、苦しくもある」
「それは……わかる、かも」
無意識に、胸に手を当てていた。乱れのない心臓の音が手に伝わってくる。
「きっと、奴だから表現できるんだろうな。あの音は」
ニアが一瞬泣きそうな、寂しそうな、諦めたような顔をしたのをかなでは見てしまった。それをごまかすように彼女は鍵盤を押し、高い方から順に和音を奏でた。
「冥加さんも、苦しいのかな」
ピアノの音がだんだんと下がっていく。低いその音よりも小さな声で発した言葉だったが、ニアにはそれがしっかりと聞こえていた。
「どうだろうな。……ほら、そろそろ次の曲を弾こう」
「うん」
外では雨がいよいよ降りだし、相変わらず雲がどんよりと空を覆っていた。
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