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セヴシック

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マキャベリズム
天宮→かなで→冥加 コルダ4我慢イベント脚色。
天宮が若干黒いので苦手な方は注意。



 偶然に、小日向さんを見かけた。得意げな顔をしてコンビニから出てきた彼女は、僕ではない誰かを見つけて、嬉しそうに駆け寄る。
 呼びかけようとした声は行き場を失い、喉の奥へと使われないまま消えていった。
「片思い」の相手が誰かと話しているところを見ると、穏やかな気持ちではなくなるのも恋の副作用のようなものなのだろうか。自分の知らなかった感情を獲得できたのなら、それは実験の成果として喜ぶべきなのだろう。でも、何故かそんな気分には到底なれそうにない。
 自分ではない誰かに、そんな嬉しそうな顔をしないでほしい。
 それは、どこかで聞いた嫉妬という感情によく似ていると思った。

 自分ではない誰か、冥加に駆け寄った小日向さんは、何を思ったのかピタリと足を止めた。そして彼女は気づかれないようおそるおそる冥加から離れていく。それに気づいた冥加が彼女を追いかける。申し訳なさそうな小日向さんの顔が、ぱあっと花が咲いたように明るくなる。
 しかし、その表情はまた暗いものに変わり、冥加から逃げるように走り去った。
 彼女が逃げた理由が知りたくて、僕は逃げられた主をからかおうと声をかける。
「やあ、逃げられたね」
 彼女があんなに足が速いと思わなかった。と、僕は皮肉も付け足す。
「見ていたのか。悪趣味だな」
 いつもなら軽口を一蹴する冥加が、珍しく気落ちしたように呟いた。
 冥加が彼女を少なからず特別に見ていることは知っていた。それがただの憎しみなのか、そうではない別の感情なのか僕は知らない。知りたくもない。
 だが、彼女に向けるその執着が好意から来るものなのであれば。
 敵は、少ないほうが良い。
「仲直りするのは難しそうだね。でも、別に気にする必要はないんじゃないかな」
 この実験が終わってしまうのは、困る。
「君だって、彼女のことが嫌いなんだろう?」
 冥加は、何も答えなかった。


 冥加と別れて少したった後、小日向さんから練習に誘われた。僕はそれを快諾し、待ち合わせ場所へと向かう。彼女と練習するのは好きだ。特に二人での練習は、他でもない自分が必要とされているようで嬉しかった。
 よろしくお願いします、と彼女はヴァイオリンを構える。そして、ヴァイオリンの音とピアノの音が重なっていく。この時間は、僕にとって確かに大事なものになりつつあった。だからこそ僕は、彼女の音色に含まれる感情に敏感になったのかもしれない。
 彼女の音色に、どこか寂しさや憂い、プラスの感情ではない何かが感じられた。原因は、きっと先ほどの出来事だろう。二人だけの時間に水を差されたようで、僕は思わず演奏を止めた。
「天宮さん? どうかしましたか」
「・・なんだか、君が寂しそうな顔をしていたから」
 彼女は本当に申し訳なさそうに、謝罪の言葉を口にした。期待していたものとは少し違っていたが、その素直な反応で満足することにした。
「相談してもらえると嬉しいんだけどな。恋人同士っていうのは、お互いに悩みを相談しあうものなのだろう?」
 恋人同士という言葉に反応したのか、小日向さんは少し顔を赤らめた。
「じゃ、じゃあ……あの、冥加さんには絶対に言わないでほしいんですが」
 彼女はぽつりぽつりと話し始める。
 自分が冥加にとって負担になっているのではないか。与えられるばかりで、自分は何もしてあげられない。あげくには、彼の時間を無駄にしてしまっている。今日も危ないところでした、と寂しそうに笑った。
 冥加に向けるその感情は、何なのだろう。それが何であっても、片思いに邪魔になるのなら排除すべきだと思った。今が、芽を摘み取るチャンスなのだと。
こ の関係を終わらせるわけにはいかない。そう、僕は音楽を手に入れるために「片思い」が必要なのだ。
「このところ忙しいみたいだからね、冥加」
 淡々とした調子で続ける。
「少し体調も崩していたみたいだし。そんなになるぐらいなら、少しは休めばいいのにね」
 もちろん、嘘だった。彼女は優しいから、冥加を気遣い接触を避けようとするだろう。
 小日向さんの瞳が不安で揺れた。その目をさせたのは自分なのに、少し不愉快になる。彼女の心を動かすのは、僕だけでいいのに。
「そうだ、小日向さん。これから少し外へ出ないかい? 君がそんな顔をしているのは、僕も寂しいな」
 話題を逸らすように、僕は彼女を外へと連れだした。僕だけを見てもらえるよう、甘い言葉をかけながら会話を続ける。

 僕は彼女を手放したくない。誰にも渡したくない。
 目的のために、手段なんて選ばない。

 彼女が逃げ出さないよう、僕はそっと、その手を握った



色々と訂正しました。
天宮の手段選ばないとこ嫌いじゃない

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