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10話← 茨の森9話 →8話 →→→1話
函館天音軸 冥加×かなで
函館軸ですがゲーム本編に全然沿ってません(コンクール云々は一緒)
ファンタジー色強め、登場人物のキャラクターがおかしいかもしれません
オリジナルの捏造設定のようなものも多々でてくるのでご注意を。
函館天音軸 冥加×かなで
函館軸ですがゲーム本編に全然沿ってません(コンクール云々は一緒)
ファンタジー色強め、登場人物のキャラクターがおかしいかもしれません
オリジナルの捏造設定のようなものも多々でてくるのでご注意を。
「さらわれたこども」
七海が昼から店番があると言って去った後も、天宮と小日向はベンチに座っていた。昼食はもう食べ終わっているためすることと言えば会話しかないと思うのだが、小日向は先ほどから言葉少なだ。七海も天宮も特に彼女の機嫌を損ねるようなことはしていない。他に何か小日向の気に障ることがあったのかと天宮は一通りの可能性を逡巡した。しかし何も考えつかず天宮は直接理由を聞こうと口を開きかけたが、尋ねる前に小日向から話しかけられた。
「あの、天宮さん」
彼女の声に特に感情はなく、不機嫌ということでもなさそうだ。
「冥加さんについて、教えていただけませんか?」
てっきり妖精についてのことを切り出されるのかと思ったのだが、小日向の口から出たのは意外な名前だった。。
「冥加?」
「前に、冥加さんに言われたんですけど……私、以前冥加さんに会ったことがあるみたいで」
そういえば地方大会の際、前にも小日向の演奏を聞いたことがあるような発言をしていた。あの時はさして気にも留めなかったが、よく考えれば冥加が誰かの演奏を気に掛けることは珍しい。まして、こんな一介の少女の演奏だ。彼女が言うように、冥加は小日向と面識があったのだろう。
「でも、冥加さんを見ても何も思い出せないんですよね」
空になった弁当箱に視線を落とし、小日向が呟く。
「それで……私、冥加さんに嫌われるようなことを、過去にしてしまったんです」
「何をしたの?」
「それは、わからないんですけど。多分……とても酷いことをしたんだと思います」
天宮には小日向が誰かを傷つけるところを想像できなかった。そして、冥加が酷いことをされて傷つくのも。
「天宮さんは、幼いころ冥加さんと一緒に住んでいたんですよね? 何か知ってますか?」
おそらく、昔のことを支倉のどちらかが話したのだろう。だが、あの二人が知っている以上のことを天宮は知らない。横浜天音に来てからも、冥加から小日向に関して聞いたことは無かった。
「いや、知らないな。冥加が君のことを話すのも聞いたことがないし。一緒の家に居たと言っても、冥加はわりとすぐに先生に連れられて海外に行ったからね」
海外に行った先で小日向に会ったというのも考えにくい。名高いヴァイオリニストや音楽関係者ならともかく、彼女はただの高校生だ。
「先生、というのは?」
「アレクセイ先生のこと。天音の理事長だよ」
小日向は驚き、少しの間何かを考えていた。
「理事長さんにお話を聞くっていうのは、できますかね……?」
「先生に? 今先生は海外にいるだろうから、多分無理なんじゃないかな。小日向さん、先生を知らないの?」
「は、はい。函館でも、手続きとかは全部御影さんがやってくださったみたいで。会ったことはないです」
「そうなんだ」
アレクセイも経営をほとんど理事会に任せ本業の指揮者に勤しんでいる。会ったことがないというのも本当で、記憶を失くしているから世界的に名をあげていることも知らないのだろう。
「アレクセイ・ジューコフっていう、有名な指揮者なんだ」
「すごい方なんですね」
無邪気に感心しているかなでを見て、天宮は薄く笑った。アレクセイと冥加についての因縁を説明するか迷ったが、それはおそらく彼女の記憶とは関係の無いことだろうと口を噤んだ。
「お昼も食べ終わったのに、引き留めちゃってすみません。色々教えてくださってありがとうございました」
「こちらこそ、お弁当ありがとう」
小日向が去ってから、天宮は初めて彼女に会った時に思い浮かべた詩の続きを思い出した。
森に誘われた無垢な子供は、自らその妖精の手を取って人間界を去っていく。それが良いことなのか悪いことなのか、その詩が何を言わんとしているのかも天宮にはよくわからなかった。
今回は短め。前の話と一緒にしても良かったかもしれない
最近天かな長編を書きたい衝動に駆られています。まずはこの連載を終えないとですよね…後ニア連載の方も(滝汗)
なんとか週1ペースで更新していきたいです。頑張ります。
七海が昼から店番があると言って去った後も、天宮と小日向はベンチに座っていた。昼食はもう食べ終わっているためすることと言えば会話しかないと思うのだが、小日向は先ほどから言葉少なだ。七海も天宮も特に彼女の機嫌を損ねるようなことはしていない。他に何か小日向の気に障ることがあったのかと天宮は一通りの可能性を逡巡した。しかし何も考えつかず天宮は直接理由を聞こうと口を開きかけたが、尋ねる前に小日向から話しかけられた。
「あの、天宮さん」
彼女の声に特に感情はなく、不機嫌ということでもなさそうだ。
「冥加さんについて、教えていただけませんか?」
てっきり妖精についてのことを切り出されるのかと思ったのだが、小日向の口から出たのは意外な名前だった。。
「冥加?」
「前に、冥加さんに言われたんですけど……私、以前冥加さんに会ったことがあるみたいで」
そういえば地方大会の際、前にも小日向の演奏を聞いたことがあるような発言をしていた。あの時はさして気にも留めなかったが、よく考えれば冥加が誰かの演奏を気に掛けることは珍しい。まして、こんな一介の少女の演奏だ。彼女が言うように、冥加は小日向と面識があったのだろう。
「でも、冥加さんを見ても何も思い出せないんですよね」
空になった弁当箱に視線を落とし、小日向が呟く。
「それで……私、冥加さんに嫌われるようなことを、過去にしてしまったんです」
「何をしたの?」
「それは、わからないんですけど。多分……とても酷いことをしたんだと思います」
天宮には小日向が誰かを傷つけるところを想像できなかった。そして、冥加が酷いことをされて傷つくのも。
「天宮さんは、幼いころ冥加さんと一緒に住んでいたんですよね? 何か知ってますか?」
おそらく、昔のことを支倉のどちらかが話したのだろう。だが、あの二人が知っている以上のことを天宮は知らない。横浜天音に来てからも、冥加から小日向に関して聞いたことは無かった。
「いや、知らないな。冥加が君のことを話すのも聞いたことがないし。一緒の家に居たと言っても、冥加はわりとすぐに先生に連れられて海外に行ったからね」
海外に行った先で小日向に会ったというのも考えにくい。名高いヴァイオリニストや音楽関係者ならともかく、彼女はただの高校生だ。
「先生、というのは?」
「アレクセイ先生のこと。天音の理事長だよ」
小日向は驚き、少しの間何かを考えていた。
「理事長さんにお話を聞くっていうのは、できますかね……?」
「先生に? 今先生は海外にいるだろうから、多分無理なんじゃないかな。小日向さん、先生を知らないの?」
「は、はい。函館でも、手続きとかは全部御影さんがやってくださったみたいで。会ったことはないです」
「そうなんだ」
アレクセイも経営をほとんど理事会に任せ本業の指揮者に勤しんでいる。会ったことがないというのも本当で、記憶を失くしているから世界的に名をあげていることも知らないのだろう。
「アレクセイ・ジューコフっていう、有名な指揮者なんだ」
「すごい方なんですね」
無邪気に感心しているかなでを見て、天宮は薄く笑った。アレクセイと冥加についての因縁を説明するか迷ったが、それはおそらく彼女の記憶とは関係の無いことだろうと口を噤んだ。
「お昼も食べ終わったのに、引き留めちゃってすみません。色々教えてくださってありがとうございました」
「こちらこそ、お弁当ありがとう」
小日向が去ってから、天宮は初めて彼女に会った時に思い浮かべた詩の続きを思い出した。
森に誘われた無垢な子供は、自らその妖精の手を取って人間界を去っていく。それが良いことなのか悪いことなのか、その詩が何を言わんとしているのかも天宮にはよくわからなかった。
今回は短め。前の話と一緒にしても良かったかもしれない
最近天かな長編を書きたい衝動に駆られています。まずはこの連載を終えないとですよね…後ニア連載の方も(滝汗)
なんとか週1ペースで更新していきたいです。頑張ります。
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